カンボジアのプノンペンに出張中、同行のデザイン関係者4名と急きょアンコールワットに行くことになりました。予定外の遠足、いえデザイン研究でうれしかったのですが、はたと困ったのは帽子を持って来なかったことです。日中は35℃ぐらいにはなるし、てくてく足場の悪い所を歩くのですから帽子はMUSTアイテムでしょう。家には売るほど帽子があるのに。。。惜しい。。。という感じです。

そこで友人の会社のショールーム(シルク製品のブティック)に仕事で寄った際に「帽子はありますか?明日急きょアンコールワットに行くことになったので必要なんです。」と言うと友人は「これは?」とマネキンがかぶっているのを指しました。ふちにワイヤーの入った少し大き目の帽子で鮮やかな赤です。さすがに赤い帽子をかぶる自信はなく「色違いはないのですか?」「ないのよ。だって私がオーストラリアから布地を手で持って帰ったんですもの。色違いまで持てないわよ。」

この友人、関係者たちは「女優みたいな人」と呼んでいます。いつもヘアスタイルからメイク、シルクのスーツ姿、ピンヒールに至るまできちっと決めているからです。カンボジアを代表する経済人でもあり、夜のパーティにはイブニングドレスで現れたりします。

「あの方が色は好きだけれど」と私が指したのはオレンジブラウンのさらに大きな帽子でした。内心、たためなかったらどうやって持って帰ろうかという思いがよぎりました。「あれはだめよ。ポリエステルだから。赤はコットンだからアンコールワットなら赤のほうが涼しくていいわ。」それでもなお迷っている私に彼女はどんどん変な帽子を出して来ます。「赤のに決めました。あなたの好きな明るい色にします。」その日はグレー系の服だったのでカンボジアの太陽に負けないよう一点豪華主義でそのまま赤の帽子をかぶってあちこち行きました。

翌日、アンコールワットでこの帽子は似合う似合わないは別として大活躍しました。帽子がない人はやはりバテます。しかもコットンなので汗をかいても涼しいのです。おそらく帽子用の生地なのでしょう。通気性が普通のコットンとは違う気がします。

「赤いから目印になります」と仲間から言われ、なるほど観光客が多いし、アンコールワットは広いし、もしはぐれたら大変です。「目印」という発想もこのような所では必要かも知れません。「赤い帽子だけあったりしてね。」と言われ、絶句する私に「大丈夫、ちゃんと探しますよ。」と言われ皆で大笑いしました。

アンコールワットは濠に囲まれているのですが、柵など一切ありません。景観を守るためにはその方が良いでしょうが、誤まって落ちる人はないのでしょうか。トュクトュク(バイクに4人乗りの車をつけた乗り物)と衝突したらしく大柄の白人男性が頭から血を流して倒れているのにも遭遇。さすが世界遺産ともなると大変な騒ぎです。

さて、たたんで日本に持って帰った赤い帽子。果たして活躍の場はあるのでしょうか。またもや寒波襲来ですが、本格的な春が来れば今度は日焼け対策が必要ですね。