「ほんやら堂」のある暮らし

ほんやら堂の外部アドバイザーのYOKOさんは公私にわたってほんやら堂が大好き。 ほんやら堂の商品やそれにかかわる人々などをつづります。

2008年10月

プロから見た成功率

 20数年前に手術を受けたとき、雑談で医師に「先生がプロのお立場から見て一般的に完全に成功したと思われる手術の比率はどのくらいですか?」とお聞きしたことがあります。執刀医は女性で業界でも名の知れた方でした。「60%くらいかな?」「えーっ、そんなにありますか?私は半分以下かと思っていました。」「あなたはずいぶん寛容な方ですね。」

 他人にこのお話をすると「ずいぶん恐ろしい会話を当事者どうしで平気でよくするものですね」と言われてしまうのですが、この話のポイントは「視点」にあります。患者の私から見れば予後が多少悪かろうと、再手術になったり、身体が不自由になったりしない限りは「成功」と言えるでしょうが、医師から見ればもっと高次元での「成功」「不成功」があるのではないかと思ったからです。

 案の定、手術後「あら、まっすぐに切ったつもりなのに、ちょっとまがっちゃったわね。どうしたんだろう。。。」ほうらね、先生から見ればもう「完全」ではなくなっているはずです。

 これを私の仕事にあてはめて考えると「完全な成功」と思えるのは数えるほどしかありません。失敗しないという自信はとてもあるのですが、「もっと短時間でできなかったか」とか「交渉の詰めが少し甘かった」などと、ぼろぼろと反省点が出てきて情けなくなることがあります。年を重ねるごとにこの反省のハードルも高くなって来るのでいつまでたっても簡単には満足はできず、上記の医師の「60%」が羨ましくなります。

 たぶん「ものづくり」においても同じだと思います。売れて利益が出れば満足するような企業なら進化も継続もないでしょう。プロほど「完全な」成功率は低い、それが成長への力と私は思うことにしています。

消費者目線

私が切花の輸入商社のお仕事をさせていただいた時に「花の品種改良は何のために行われるか知っていますか?」とその会社の社長に聞かれたことがあります。「きれいな花、珍しい花」と答えてはあまりにも素人っぽいので「花持ちの良さ(花を長く楽しめること)」と答えてみました。これなら業者にも消費者にもメリットがあります。ピンポン!ところが後は「害虫に強い」とかおどろおどろしいのは遺伝子操作をしてひとつの球根からは1回しか花が育たないようにする、というものもありました。開発にはお金と時間がかかるわけで、そうやすやすと黙ってふやされてはかなわないという気持ちはよくわかるのですが、消費者の目線を無視したところで技術がどんどん発展していくのが空恐ろしい気もしました。

私は総合商社に勤務していましたが、総合商社の扱う商品は素材が多く、また製品も航空機、船舶、産業機械といった大型のものがほとんどです。私はもともと機械部門にいましたが、女性の総合職には消費財のほうが向いているのではないかと異動をさせられました。このジャンルで強みを発揮したのは私の「消費者目線」です。私の取引相手は海外も含めたメーカーや流通業者ですが、ほとんど女性はいませんでした。私の意見を興味深く聞いてもらえたのは、いかに企業の利益本位にモノが作られ、流通しているかの証拠でもあるでしょう。

そんなやり取りの中でメーカーにも思いこみが多いことに気づきました。自分たちはきちんと目標を持って商品開発をしており、経緯もよく知っているため、他人もわかっているものと思いこみ説明不足になってしまうことです。業界の常識であっても一般消費者はそんなことを知るわけがありません。また、消費者にもいろいろな考えの方がいることに気づいていないこともありました。

ほんやら堂は消費者に誠実な企業だと思います。私はモニターとして意見を求められることもありますが、個人的に購入した商品についても気づいたことはどんどんフィードバックすることにしています。率直な意見こそ良い商品を作り出すのに大切なものだからです。
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