私の年代にとって不二家は特別なブランドでした。まだ女性どうしで、あるいは女性が子どもを連れて外食をするのが気恥ずかしい時代に安心して行けるレストラン、もちろん家族そろってちょっぴり贅沢な気分を味わえる所でもありました。お土産に持って行くケーキにしても最高級ではないけれど失礼にはあたらないのが不二家のケーキでした。普通すぎてありがた味のないナショナル・ブランドでもなく、一握りの人たちのための気取ったブランドでもない、大衆に実に程よい心地良さを与えてくれる不思議なブランドでした。
 時を経て巷には多くのブランドがあふれています。消費者もデザイン、パッケージ、ネーミング、機能や広告に差別化を見出そうとし、企業側も生き残るために知恵を絞ります。私自身はブランドのブランドたるゆえんは「品質の良さ」にあると思っています。企業が提供する商品やサービスが悪ければどんなに良いデザインだろうが、ネーミングが素晴らしかろうがそれはもうブランドではありません。
 不二家のブランド・ポジショニングはほんやら堂にとってお手本になると思います。「品質」にこだわるほんやら堂は不二家以上のブランドになれるはずです。