NHKで11月3日に放送された「東北グランマ世界へはばたく」をご覧になりましたか?簡単に説明するとスイス人であり母が日本人でもあるデザイナー カズ・フグラー女史は被災地である陸前高田市への支援を続けてきましたが「手仕事による復興プロジェクト」を立ち上げ、仮設住宅に暮らす主婦たちの縫製チーム「東北グランマ」と提携しました。次には東北グランマの代表2名がスイスに売り込みに行くことになり、商談を成功させました。

この番組を見て実にいろいろな事を考えました。私自身も途上国でハンディクラフトの輸出業者たちに日本市場でのマーケティングを教えている立場ですが、彼らが今後どうやって生計を立てていくかをサポートしてあげる事が一番の貢献だと思っています。アフリカやアジアの貧しい国は支援慣れしてしまって労働意欲がなくなっている所もあります。資金的な援助というのは未来永劫続くとは限りません。自立の道を考えてあげる事こそが彼らにずっと感謝されると思います。大金持ちになれなくても自立できるという事は自信につながりプライドを持つことができるからです。

東北グランマの成功はカズ・フグラー女史という素晴らしい理解者でありコーディネーターを得た事に尽きます。家族を失い仮設住宅に暮らし、すっかりやる気を失っていたお母さんたちがプロジェクトの下に結集することにより、会話や信頼を取り戻し、封印された和裁の技術が再び輝きを放ち、ミシンが音楽のように軽やかな音を立てる。仕事を持つ事にこんな魔法のような力があることを改めて知りました。

そしてスイスに出張したお二人、一見ごくごく普通の東北のお母さんたちです。ところがスイス人バイヤー相手に堂々と物怖じせず商談をこなします。拍手です。手に職がある誇り、困難を切り抜け今いのちがある事への感謝と喜びが彼女たちを輝かせているような気がしました。

今年も上野駅のコンコースに彼女たちの手作りオーナメントがツリーを飾っています。東北のお母さんたちの熱い心が東京の冬を彩ります。