私自身はデザインの勉強をした事がなく、直接デザインの仕事をした事もありませんが、会社員の頃メーカーとの取引があったり、マーケティングの仕事の中でデザインとは何となくかかわりがありました。独立してコンサルタントとなった今はもっと密接で日本製品への海外マーケティング、あるいは海外企業への日本市場でのマーケティングという仕事で「デザイン」は避けて通れないものとなっています。

子どもの頃からクリエイションには関心があり、まずライターになりたいと思いました。あちこちで原稿料をいただく事もありますのでこれは実現したと言えます。子ども服のデザイナーになりたかった時期もありますし、大人になってからはスタイリストになりたいと思った時期もあります。

ベトナムで3年連続して輸出業者向けに日本市場向けのマーケティングを教えた事があるのですが、いつもグッドデザイン賞の審査員の先生(プロダクト・デザイナー)とご一緒しました。私はそれまでデザイナーというとアーティスト的なイメージを持っていたのですが、先生方は模範的なビジネスマンでした。先生方は「デザイナーは芸術家ではありません。売れてナンボの世界です。だからビジネスマンなんですよ。芸術家気取りの人は大成しない。」とおっしゃいました。

途上国では売れるものは一斉にあらゆるメーカーがコピー商品を作って稼ごうとします。私自身は「安かろう、悪かろうの薄利多売は貧困の連鎖につながる」という持論を持っていますが、まさに先生方も同じ意見を持っていらして「貧困からの脱却には差別化が必要でデザインも差別化のひとつです。人のまねをしないで頑張りましょう。」と現地で教えておられました。デザインが貧困からの脱却につながるとはすばらしい事です。

タイは中進国ですが、日本が主導でデザイン賞を作り、61件が今年の日本のグッドデザイン賞を受賞しました。来年はフィリピンとのコラボが始まります。こちらも欧米の著名ブランドが足しげく通うアジアのデザイン大国ですので今から楽しみです。

あるデザインの専門家いわく「デザインとは人の痛みを和らげてくれるもの」。実に含蓄に富む言葉です。この言葉からすると「ほんやら堂の製品はデザインしてます」。