先日、ほんやら堂の社長とお昼をご一緒する機会があり、話題のひとつとして「品質」がありました。中国で製造をする際は「日本向けは品質基準が厳しいので他国向けより単価が上がる」とのお話でした。

日本人の品質に対する厳しさは世界一と言っても良いでしょう。私自身も中国、東南アジアの国々の政府機関や工場をまわって必ず文句を言われることです。他の先進国が見逃すようなミスも日本人は検品で落してしまうので、結果単価を高くせざるを得ないわけです。でも高ければ日本人は買わないというジレンマがあります。その次に言われるのは「日本人はどんどんもっと安く、もっと良いものを、と要求する。良いものは高くて当たり前ではないか。」まことにごもっとも。「日本人は指示されなくてももっと良いものをもっと安く作ろうと自分で努力する習性があるからです。」と私は説明します。

日本人の職人気質的な良いもの追及心はバブル期に少し変わった気がします。海外ブランド・ブームで大量の海外製品が日本に流入したからです。たとえば、スポーツ・ウェアなどブランドは有名であっても縫製基準は従来の日本基準より落ちますし、その生産が途上国であっても消費者はあまり気にしなくなりました。

バブル崩壊後は消費不況と言われて久しいですが、だんだん賢い消費者がふえてきているような気がします。いわゆるオーバー・スペック(仕様過剰)で高いものより、自分の価値観にあったもの、あるいは耐用年数に見合った品質と価格のバランスで商品を選択するようになっています。たとえば、1シーズンで消費してしまう商品に3年間使えるような品質が必要でしょうか。もちろん同じ価格なら当然後者を選びますが、そんなことはまずあり得ません。

ほんやら堂の商品が売れる秘密のひとつはそこにあると思っています。「耐用年数と品質と価格のバランスがリーズナブル」という点です。品質面ではまだまだ改良の余地がある、でも使用期間と価格を考えると納得できる、と消費者は直観するのではないでしょうか。

「安全」というのも品質の重要な要素です。ほんやら堂の商品は手軽に買えても安全面をおろそかにしていないことも消費者に支持される秘密だと思います。