私自身はデザイナーではありませんが、デザイン関係のプロジェクトをふたつ持っています。

ひとつはベトナムでのハンディクラフト(手工芸品)輸出業者向けのセミナーです。
毎年1回、2005年から続けています。日本の第一線級のプロダクト・デザイナーの先生とご一緒にデザインとマーケティングの面からアドバイスをしています。このセミナーを立ち上げたときは(財)日本産業デザイン振興会(グッドデザイン賞の主催者)のトップ、工業デザイナーの先生と不思議にも意見がぴったり合ったのは「デザインによる差別化は貧困の連鎖からの脱却」という思いでした。途上国は安かろう悪かろうの商品を輸出してとりあえずお金を稼ごうとします。すると価格競争に陥り、利益率が低くなり、一国内での脚の引っ張り合い、商品によっては途上国どうしの競争になり、ますます貧困になるのです。デザインの差別化は貧困からの脱却につながる、というのはそういう背景があります。毎年のセミナーの内容は変わっていくのですが、根底に流れているのはこの強い思いです。

もうひとつは中国のスポーツ用品メーカー向けに日本の若手デザイナー約20名によるデザイン・コンペをコーディネートする仕事です。こちらもありきたりの商品を安さで売りまくり大金持ちになった中国企業が相手ですが、デザインの差別化を行なうことにより「偽物天国」「粗悪品」の汚名を中国が返上できる一助になればと願っています。また、先方も日本の若手デザイナーの世界最大の市場への門戸を開きたいと言ってくださっています。日本人デザイナーによる安価で素敵な商品が誕生すれば、日本市場に入って来なくても東南アジア、南米、東欧といった国々でも売れるはずです。一握りのお金持ちだけのためのデザインではなく、世界中の大衆が支持する商品をデザインする、これも素晴らしいことだと思います。このコンペにはほんやら堂からご紹介をいただいた群馬県立女子大のデザイン専攻のゼミ生たちも加わっています。同大学はほんやら堂と産学連携をしていますが、ものづくりもしっかり勉強している学生さんたちです。コンペで良い結果が出ることを期待しています。